『土曜ワイド殺人事件』『新・土曜ワイド殺人事件』配信開始
とり・みき×ゆうきまさみ『土曜ワイド殺人事件』『新・土曜ワイド殺人事件』の電子書籍版が各ネット書店で配信開始されました。
続編の単行本が出た頃は、少年誌からも、本家2時間ドラマからも、おっぱいが徐々に無くなりつつある頃でした。……と、つぶやいたら、ゆうきさんから以下のツイートが。
確認したところ、発想の元になった土曜ワイド劇場『混浴露天風呂連続殺人』シリーズでは、2007年の最終作までおっぱい放り出してました。というわけで是非。(1:17 - 2019年3月9日)
さすが土ワイ。そしてさすがゆうきさん(よくチェックしてる)。というわけで、テレビ画面にまだおっぱいがあふれていた古き良き平成を偲ぶよすがとして、あなたのデバイスにもどうぞこの2作を。
※購入版にモザイクはありません。
イタリアにいるヤマザキマリさんと『プリニウス』を合作出来ている現在と違い、このマンガの執筆時はまだまだ「ネットでデータをやりとりする」なんてことは一般化していませんでした。おおまかなストーリーを決める最初の合宿こそ一緒でしたが(でも、たいてい馬鹿話と温泉三昧で終わった)実際に作業が始まると、編集さんが生原稿を持ってお互いの仕事場を行ったり来たりしてしていたのです。精神的にも肉体的にもいちばんハードだったのは、間違いなく担当氏だったでしょう。2人ともそんなに入稿が早いほうではありませんから、よけいに。
おまけに合宿で決まるのは舞台設定くらいで、どの回もストーリーの着地点は全然未決のままの見切り発車です。こういう状況での合作は、変更提案の是非確認をいちいち相手にとっていたのではさらに時間がかかってしまいます。そこで「それぞれが付け加えた、あるいは変更した箇所やアイデア、ギャグには、お互い一切文句をつけない」という前提で作業を進めました。
そう決めたのはいいのですが、そうすると二人ともまるで嫌がらせのようにやたらギャグを上乗せしてくる。困ったものです。そのせいで、完成時にはやたら(お互いのテイストの)小ネタ満載、という有様になっています。
もちろんストーリーも迷走の極みです。僕も、そしてゆうきさんも、バトンを受け取って「わ、いったいどうすんだ、これ」となった局面があったはずですが、相手が付け加えた小ネタはたいていはスルーしつつ、なかには「これ使える!」と反応し、膨らませて、メインストーリーに絡めていったり、ということもありました。解説対談でも語っていますが、コール&レスポンスの即興演奏で進んでいくフリージャズのようなもので、もしかしたらそこがこの作品のいちばん面白い部分かもしれません。
『プリニウス』と違い、こういう危なっかしいやり方は、基本何でもアリのギャグマンガだからこそ成立し得たわけですが、とはいえ、二人とも因果と整合性を気にするマンガ家なので、絶対収拾がつかないかのように見えて、終わってみればなんとなく伏線(?)は回収され一件落着……という妙に律儀なことになっています。
3人とも脱稿時点では「もう二度とこんな大変なことはやりたくない」と思ったけど、よく考えればこの作品は、読者にとってもストーリーを楽しむというより、お互いがワルノリしたり苦労したりしている、そのメイキングやバックステージのほうを楽しむマンガだったのかもしれません。