プリニウス最終話「テラ」

2023年02月07日

2/7は「新潮」3月号発売日です。ヤマザキマリ+とり・みき『プリニウス』足かけ10年に渡る連載の最終回が掲載されています。WEB公開はもうしばらく後になりますので早くご覧になりたい方はどうぞ本誌をお買い求めください。

しかしこのアオリ(柱)間違ってないか......?

ヴェスヴィオの噴火はその堆積物から時間ごとの噴火の様相や火砕流規模がある程度わかっています。火砕流は何度も起こり夜にヘルクラネウムを、早朝にポンペイを壊滅させましたが、最大のサージはそのあとにやって来ました。

午前8時頃に起きた火砕流は海上を滑り、ナポリ湾を挟んでスタビアエの対岸のミセヌムまで到達しそうな勢いだったと考えられています。小プリニウスの書簡にも「噴火の煙が押し寄せ、本体はミセヌムの手前で止まったが街は黒い雲で包まれた」との記述があり、伯父の留守を任された小プリニウスは家族をともなっての脱出を断念することになります。スタビアエもまた煙に包まれ、熱被害は免れたものの喘息持ちであったプリニウスの命を奪うことになったのでした。

ヤマザキさんとこの連載をスタートするとき「見込みとしては5〜6巻くらい?」という話をしたのを憶えています。結果はその倍の長さになりました。足かけ10年ともなると、長期の連載マンガにはありがちですが二人の画風にも変化があり、またあとから学んだ知識や、発掘され新たになった事実もあって手を加えたい箇所が幾つかありますが、そのときそのときでは持てる能力の限界値を振り絞って描いてきたという自負があります。終盤は連載が隔月掲載になったのと、コロナ禍の影響もあり進行が遅滞しましたが、とにもかくにもちゃんと終わらせることが出来ました。その意味では「描ききった」という想いがいまはしています。

『プリニウス』は自分のキャリアの中でも特別な作品になりました。合作を持ちかけてくれたヤマザキマリさんに深く感謝しています。彼女が描く素敵なキャラクター達が届くのが毎回本当に楽しみでした。