ベイルートからパリそして日本からイタリア
昨日11月4日は京都国際マンガミュージアムでヤマザキマリさんとレバノン出身のBD作家ゼイナ・アビラシェドさんとの公開対談がありました。
ヤマザキさんは皆さんご存じの通りレバノンの隣のシリアに一時期住んでいましたし、祖国と居住国二国間を行ったり来たりの作家活動や音楽の影響など、共通する資質の多いお二人でした。ちなみにゼイナさんの『オリエンタル・ピアノ』の日本版は『プリニウス』の仏語訳も担当している関口涼子さんが訳しています。
ゼイナさんのモノトーンの画風は「描き始めたときの自分の画力の効率を考えて引き算で決定した」とのことですが、ページ単位コマ単位が1つの独立したイラストのようになっています。色を使っていいBDの中にあって僕の好きなマルク=アントワーヌ・マチューなども白黒派(彼はグレーも使う)ですが、こうした人達の潔いベタの使い方はとても刺激になります。日本でも島田虎之介さんや山本直樹さんなど、頑なにグレーを使わない人が何人かいますけれどもね(僕も『トマソンの罠』という連作ではグレーを封印して描きました)。
あと、進行側が敢えてそうしたのかどうかわかりませんが、ベイルートとダマスカスという都市に住んでいたお二人ですから、もっと政治や紛争や難民の話が出てもよかったのではないか、と思いました。それはごく自然な、そして重要な話題の1つではなかったかと。
ところで僕もマリさんも、他のゲストと同様にマンガミュージアムの一階のカフェの壁には既に落描きをしておりますが、今回はついに手型を取られてしまいました。型取りの最中は特殊メイクをされてるようで面白かったですけれども......あと、昔の少年誌に載っていたエクトプラズムが実体化して蝋に残した「幽霊の手型」の写真を思い出した。完成披露までにはひと月以上要するようです。