伝奇マンガの巨匠と
11/25、川崎市民ミュージアムで行われた星野之宣さんと諸星大二郎さんのトークイベント(開催中のビッグコミック50周年展の一環)に行ってきた。
締切中だったが、このお二人の作品なくしては自分も『石神伝説』を描いておらず『プリニウス』へ繋がる道もなかった。そのくらい自分にとっては存在の大きいお二人が人前で会するイベントもそうそうない。しかも訊き手が夏目房之介さんとあっては矢も楯もたまらず1時間半ほど抜けだしてトンボ帰りした次第(でも編集さんからはやっぱり怒られました)。
実は僕は星野さんの『宗方教授伝奇考』潮漫画文庫第一集に解説を書かせてもらったことがある。そこではお二人の作風の比較のようなことをやってしまっていて畏れ多いにもほどがあるのだが、今回久方ぶりに読み返したら、そう外したことは書いていない気がしたので、もし機会があれば読んでみてください。
さて、そういう創作の秘密的な話が、お二人のお口から語られるか……とは最初から全然思っていなかった。諸星さんとは何度かお目にかかっていたし、また過去のインタビューやコメントなどを読む限り、少なくとも諸星さんがその手の話をなさることはないだろう、という予測はついていた(それが諸星さんのナチュラルボーンな資質なのか、そう見せかけてわざとはぐらかしているのかはいまもってわからないのだけれど)。
そう予測済みではあったが、にしてもお二人とも想像以上に寡黙! 諸星さんはともかく、星野さんもまた具体的な創作の話はあまりなさらない。もしかしたら諸星さんに合わせて、つまり、自分だけ喋りすぎることを気になさって、あるいは一種のライバル意識からそうなさっているのかな……と俗物のマンガ家は邪推したりしていたが、とにかく、饒舌すぎるとりマリとはそこがいちばん違う。そして、自作を語らないのはやはり格好いいなあ、と。
数少ないご発言の中から当日いちばん心に残ったのは諸星大二郎さんの次のお言葉
「作品なんて無責任に描いてるんだから、あとから人に『責任とれ』とかいわれても困る」
そういうお二人を相手にイベントを成立させた夏目さんのMC手腕にも感心。夏目さんがいちばん嬉しそうでした。