鹿野司『サはサイエンスのサ』完全版

2024年09月19日

SFマガジンに長期間連載されていた鹿野司さんの『サはサイエンスのサ』完全版が早川書房よりされました。装幀は岩郷重力さん。カバーと本文カットをとり・みきが担当しています。

ごらんの通り650ページもあり、内容を知らない方には科学解説書で大部というと敬遠されるかもしれませんが、親しみのある語り口で大変読みやすくわかりやすい。その話し言葉による平易な文体に即して、気軽に手に取ってもらえるようにカバー絵もシンプルでカジュアルなマンガキャラにしました。

カバーをめくると本体表紙は一気に重厚になります。解説は堺三保さん、加えて白土晴一さん・松浦晋也さん・不肖私の文章原稿も収録されています。

私のマンガにも彼をモデルにしたキャラは出てきます。それは知っていても本人の文章は読んだことがない、という方にもぜひお手にとっていただけると幸いです。科学の話だけでなくて震災やコロナやSNSや自身の親の看取りの話が色々詰まっています。

構成は基本掲載順ですが、以前の2010年版(本人による抜粋版でした)のあとに未収録分とその後の連載分を足してあります。ですので未読分を読むのには便利。「完全版」というとボーナストラック収録程度に思われるかもしれませんが追加分(前回未収録分+前回刊行後約12年間の連載分)のほうが多いのです。右が前回収録分、左が今回の追加分です。連載の1回分をほぼそのままの形で見開き収録していますので、時系列や収録順に関係なく、読みたい話題・気になる話題だけ拾い読みしてもいいかもしれません。

あらためて読むといま現在世界やSNSを被っている空気や問題に呼応する指摘も多く「こんなに早く察知していたのか」と驚いてしまいます。それでも彼は世界を呪うことなく誰かを強く罵ることもなく常に優しくポジティヴでした。常套句ではありますが今まさに読まれるべき本だと思います。